水戸地方裁判所 昭和51年(わ)46号 判決 1976年5月31日
本籍
茨城県北茨城市関南町仁井田七七番地の二
住居
同県同市関南町神岡下三二一番地の四
会社役員(もと水産加工業<日>日下部商店経営)
日下部武夫
大正一一年一一月二八日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官斉田郎太郎出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一〇月及び罰金二〇〇〇万円に処する。
右の罰金を完納することができないときは、金三万円を一日に換算した期間(端数は一日に換算する)、被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告人は、茨城県北茨城市関南町神岡下三二一番地の四において、「<日>日下部商店」の屋号で水産加工業を個人で営んでいたものであるが、所得税を免れようと企て、
第一、昭和四七年分の総所得金額が三八四八万四三二円で、これに対する所得税額は一九二三万四〇〇〇円であったのにかかわらず、売上を一部除外し、又期末棚卸商品を過少に計上することにより簿外預金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ、昭和四八年三月一五日、同県日立市若葉町二丁目一番八号所轄日立税務署で、同税務署長に対し、総所得金額が一三〇五万七六五八円で、これに対する所得税額が四四八万五四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額と右申告税額との差額一四七四万八六〇〇円をほ脱し
第二、昭和四八年分の総所得金額が八六六七万七六四〇円で、これに対する所得税額は五二〇七万九五〇〇円であったのにかかわらず、売上を一部除外し、又期末棚卸商品を過少に計上し、域は架空の未払設備代金を計上することにより簿外預金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ、昭和四九年三月一五日、前記の日立税務署で、同税務署長に対し、総所得金額が七八二万一〇六三円で、これに対する所得税額が一九七万三七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額と右申告税額との差額五〇一〇万五八〇〇円をほ脱し
たものである。
(証拠)
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書五通
一 被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書一一通
一 被告人作成の答申書四通
一 日下部アヤ子、日下部誠の検察官に対する各供述調書
一 日下部アヤ子に対する大蔵事務官の質問てん末書
一 箱崎国之、阿久津、渡辺信明、佐藤昭五、小島静哉作成の各供述書
一 南陽一朗(二通)、日下部アヤ子(三通)、小川博通、安川治郎、菅原昭一(二通)作成の各答申書
一 鈴木義紀作成の申述書
一 大蔵事務官作成のたな卸高確認書、東邦銀行勿来店調査関係書類、昭和四六年分たな卸単価調査書、各年分仕人数量調査書、各年分売上数量調査書、簿外売上金額調査書、簿外預金残高および受取利息調査書、各年分別生命保険料払込金額調査書、簿外事業主勘定調査書、利息目次調査書
一 押収してある便つぼに捨てた印章一〇個(昭和五一年押第二四号の1)、印章六個(同号の2)、領収証一冊(同号の10)、領収書等一綴(同号の11)、保険関係領収証等一綴(同号12)、雑書綴一綴(同号の14)、総勘定元帳三綴(同号の15ないし17)、仕入帳二綴(同号の21、22)、出荷帳二綴(同号の24、25)、確定申告書控等一綴(同号の26)、支店長保管分明細ノート二冊(同号の27)、定期預金一時預り明細表一綴(同号の28)、裏担保預り定期預金明細表一綴(同号の29)、印鑑六個(同号の30)、参考資料一綴(同号の31)
判示第一の事実について
一 福田邦雄、加瀬栄治、内山芳太郎、松中敬、渡辺信義作成の答申書
一 日立税務署長室賀寿男作成の証明書(日所一-五四二のもの)
一 日立税務署長稲田武夫作成の昭和五〇年一一月一四日付証明書
一 大蔵事務官作成の修正貸借対照表(昭和四七年一二月三一日現在のもの
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和四七年一月一日至同年一二月三一日のもの)
一 押収してある現金出納綴(昭和五一年押第二四号の18)
判示第二の事実について
一 川田得雄、月井康雄、大山義男、鈴木均平、鈴木博、大矢富雄の検察官に対する各供述調書
一 月井康雄、大山義男、鈴木均平、中野幸雄に対する大蔵事務官の各質問てん末書
一 川口得雄、上原光夫、月井康雄、田村正美、大矢富雄、森平治、飯高兵市、赤津正四郎、小林茂兵衛作成の各答申書
一 日立税務署長室賀寿男作成の証明書(日所一-五四三のもの)
一 大蔵事務官作成の修正貸借対照表(昭和四八年一二月三一日現在のもの)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和四八年一月一日至同年一二月三一日のもの)
一 押収してある重要メモ三枚(昭和五一年押第二四号の3)、元帳一綴(同号の4)、契約書一綴、御見積書三綴(同号の5)、
一 請求書綴(同号の6)、領収証一綴(同号の7)、売買契約書一枚(同号の8)、領収書一綴(同号の9)、住宅新築等請求書(同号の13)、現金出納簿二綴(同号の19、20)、経費帳一綴(同号の23)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法第二三八条に該当するところ、情状により懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期、罰金刑については同法第四八条第二項により右各各罪所定の罰金の合算額の各範囲内で被告人を主文第一項のとおり量刑処断し、右の罰金を完納することができないときは、同法第一八条により主文第二項のように被告人を労役場に留置し、なお諸般の情状を考慮して同法第二五条第一項を適用し、主文第三項のように右懲役刑の執行を猶予することとする。
(裁判官 草野安次)